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手を差し伸べるというのは、勇気が要ります。




お金がなくてゴハンや教育に手を出せないとか、
戦争があって家族が殺されたとか、
そういうイカニモ的なひどい状況にある人たちばかりではなくて、

幸せそうに見える一家の中や
雑踏の渋谷、満員の電車の中ですら
「助けて」が聞こえる時があって、

それらにどうやって関わっていったらいいのか、
自問自答する時が一番怖いのです。
自分自身が「助けて」と言いたくなるような、自身の過去を思い出すような、
限りない深淵を覗き込んでいく行為だからです。
一緒に墜ちはしない、と言い切れるほどに、私は強くはないのです。


パレスチナの、ある7人家族の話です。
長閑な田舎の庭付き一軒家、
1女4男の姉弟たちの中、
一番下の子は5歳の男の子。
小学校にも上がっていない、身長も小さな子。






私たち日本人3人は
この家族からの歓迎を受け、
私を連れてきてくれたジャーナリストさんは分離壁を撮影しに行き、
私は窓からぼぉっと、100mほど先にあるソレを眺めていました。










すると先ほどの男の子が来て、
「家の中を見せてあげる」
と言うのです。

アラブ人は5歳の子どもでも客のもてなしが得意です。
お客を一人にすることなんか有り得ません。





「そうだね、見せて(笑)」


と言って彼について行った私は、
両親の部屋に案内されました。



こぢんまりしたお部屋に、ドレッサーとダブルベッド。
末っ子の彼が寝ている部屋でもあり、
彼は自分の絵の具を出してきて、


「これは青。空と同じ色だね。
 これは茶色。土もこんな色だよね。
 これは…」



と遊び始めたので、


私は
「そうだね。うん、そのとおりだよ。きれいだね。」
と相槌を打ちながら聞いていたのですが、












突然彼は、私に掴みかかってきたのです。










最初は、じゃれているのかと思いました。
そうでは無いと気づいたのは、
彼が私の上に馬乗りになり、私の服を引きちぎろうとし、
胸を思いきり爪を立てて掴み始めたときでした。








これって、レイプと違うの?









一瞬、
「女子大生なみちゃん、5歳児に暴行を受ける」
なんてブログのタイトルが思い浮かびましたが、
そんなこと考えている場合ではありません。










この子が別に性欲を満たしたいんじゃないことは明らかです。
ただ、何かを暴行という行為で代替したいだけなのです。













それは何なの?









と思いながら彼の顔を見つめて、
痛みに耐えつつされるままになっていたら、









遂に彼は、その小さな手で私の首を締め始めました。












これはマズい。
子どもは手加減を知らないのです。









必死で私の首に食い込む彼の指を振りほどいて
彼を抱きかかえ、
「どうしたの? お姉ちゃんが嫌いなの?」
と聞いてみたのですが、



「違うよ。好きだよ。」



と言いながら彼は続きを始めようとするのです。









「でも、お姉ちゃんは好きな人とこういうことはしないよ。
 だから、君とこういうことはしないの。」




と言って部屋を出ようとしたら
彼はドアに鍵をかけ、
「行っちゃ嫌だ、行ったらもっとひどいことするよ」
と繰り返すので、






「でもお姉ちゃん、痛いのは嫌だな」



と言葉を返した瞬間、


彼は私の腕に、思いきり噛み付いたのです。









うそ。
なんで?
わたし、どうしたらいいの?

頭真っ白。



無理矢理振りほどいたら自分の腕の皮膚が千切れてしまいそうなほど
強く噛む彼に、


「どうしたの? なんでこんなこと、するの?」


と声を抑えて話しかけても、
彼は歯の力を強め、私の目を睨みつけるだけ。









体中の血の気が引いて行く感覚。
気が遠くなりそうな痛み。
それでも彼が私に持っている気持ちは、悪意でも殺意でもないのです。
じゃぁ、なんで?






自問しながら10分ほど耐えていたら、






彼は突然噛むのを止め、私を突き飛ばし、
ぷいっと外へ出て行ってしまいました。











なんともまぁ、唐突な始まりと終わりです。
いや、多分コレは始まりの終わりでしか、ないのかしら。












とりあえず彼のお父さんに報告。
お父さんには「叱らないで、彼にも考えがあるんだから」と伝えたものの
彼はその末っ子を呼びつけて叱ろうとするので、
そのまま引き取って、
また先の部屋に2人で戻りました。







今度は窓を開け、
外の景色を眺めながら

「あそこに人がいるよ、知ってる?」
「あれは隣の誰々だよ」
「よく知ってるのね、じゃぁあの娘は?」
「あの子は嫌い。キレイじゃないもん。」
「お姉ちゃんよりはキレイだと思うよ?(笑)」


なんて話をしていました。
こうしていれば、普通の5歳なんだけどな。














実はその時、彼のお母さんはフランスで講演ツアーをしており、
3週間家を留守にしていた最中でした。



大学1年生のお姉さんは、
お母さんの代わりに家事をしたり、
女子大生らしく友達と遊ぶのに忙しく、



ジャーナリストたちの相手をするお父さんは
やっぱり忙しくて、
この末の「ワガママな」男の子がぐずる度に
チョコレートをあげるのが習慣になっていて、












私が思うに、
彼は全力で彼に向き合ってくれる誰かが欲しかっただけなのです。
欲しいのはチョコレートでもあやし言葉でもプレゼントでもない。
本当に欲しいものは誰もくれないから、
代わりのものを自分で奪い取るしかないのです。












その夜、
私が寝る準備をしていた長女の部屋へやってきてドアをノックし、
「マイと一緒に寝るんだ!」
と譲らない彼をお父さんは叱りましたが、


「マイ」が笑って彼を呼び入れてしまったため
まんまと同じ布団に潜り込むことに成功した彼は、
「明日もいる?」
「帰っちゃダメだよ」

と呟きながら眠りに落ちてゆき、








「明日帰る予定」だった私は
まいったなぁ、と思いながら彼の寝顔を眺めていましたが、








次の日はやっぱり予定が入り、
彼とはそのまま、離れてしまいました。









彼は「助けて」なんて口では一度も言わなかったけれど、
彼が誰かの手を求めていたことは明らかです。
私は中途半端に彼に関わり、そして離してしまいました。









彼が私の腕に残した歯型は、
あれから7か月経った今ではキレイに消えていて、

「帰っちゃダメだよ」
の言葉だけが、私の胸に突き刺さっています。










今でも、この日本でも、
「助けて」と言うのとは違う方法で誰かを求めているひとは沢山居て、





私の元にたまに届くメッセージやメール、
「もう会えないかもしれない」
という言葉の後ろに透けて見える「助けて」は、
いつも私を自問自答の深淵に引きずり込むのです。








出来ることと、出来ないことがあります。
手を差し伸べるときは、それを意識しなくてはなりません。








見定めるのは、切り落とすのは痛みを伴う行為で、
アクションを取るのは勇気が要ります。

何より私は、
一番身近な人たちを大事に出来ていないのです。












「君みたいな人が、夜空で一番輝く星なんだよ」
と言うハーゲンに私は、
「一見して目に映らない小さな星を見つけるのは、
 強く輝く星を眺めるより大事なの」

と返しました。




ハーゲン:「君は本当に楽観的なひとだね(笑)」




そうだね。

でもね、ハーゲン、



私だって戦ってるんだよ。
兵士の君とは違うやりかたで。


私はそれを誇りに思っているけれど、
いつかそれで死んでしまうかもしれない。







私だって、「助けて」と言いたくなることはあります。
助けてくれるひとはいっぱいいます。
私は一人で、その人たちに心の底から感謝します。
時に、差し伸べられる手を掴みます。
私は幸せ者なのです。


それでも贅沢なことに、
「たった一つの手」を求めてしまうことがあるのです。
それは時に、
血の繋がりでも母体意識の共有でも体の繋がりでも無い何かなのです。


それと戦うとき、
私に投げかけられてきた多くの「助けて」を想います。











ねぇハーゲン、
君も現実と理想の間で「助けて」と言っているように見えたけれど、
そして
君が漠然と持っていた理想を行動に変えて君に見せた私は
君にとって輝くような存在だったかも知れないけれど、



私のことは、助けてくれるの?
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